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いねぇな……。そりゃ俺の子守りじゃないんだからな。
俺はさっきから何回階段を昇り降りしただろうか? ここが何階なのかさえ忘れてしまった……。本物の迷子さんだ。
大きい声を出したけど、返事は無い。
相変わらず周りでは、男の生徒と、女の生徒が <立ったり> <歩いたり> <喋ったり> してる。全く暢気な面をしやがって。気楽なもんだよ。
阿久津とは奇跡的にも俺と同じクラスで助かっている。
都合よくそこいらを通りかかってくれないかなー? と、ひと休憩を挟み、俺がウォータークーラーの水を飲んでたら、女が「いつまで飲んでるのよッ?」ってな顔で友人とヒソヒソ俺の噂なんかをしている。
噂ってものは尾ひれがつくものだ。
だからまた、俺はもう一度立ち上がって挑戦する気を奮い起こした!
「おーい! 阿久津ー!」
「阿久津ー! でーておいでー!」
もちろん人任せだ! 一人では無理でも、力を合わせれば達成できることだって、世の中にはあるんだ。
でも──……違う階だったら?
途端に弱気の虫が顔を覗かせた。
階違いなら、何べん叫んでも聞こえないよなぁ……? なんだか少し心配になってきたもの。
一年三組と言うくらいだ、もしかすると一階か? だよな? 俺としたことが……全く。うっかりさんだった。
トボトボと俺は一階の靴を履き替える所を横切って、奥の方まで歩いていると、チラリホラリと生徒の姿も見える。まだ大丈夫だ。
さっきから部屋のプレートを観察しているけど <○○組> というネームよりも<○○室> と書かれた部屋の方がやけに目立つ。
ここは、この学校の重要施設なんだろうか? それなら新一年生は金の卵だから、この階の可能性も捨てがたい。
でも──、こんなとこ通ったっけ?
朝の登校時には、いつも階段を上がってるような気もするんだが、気のせいか?
うむ──。
こりゃぁ~違う階だわ~。
確か、階段を上がった記憶だけは覚えてる。
俺の方向音痴という能力も、その記憶だけは消せやしなかった。そこで俺は二階へ上がった。今日の収穫だ!(マイム・マイム・ベッサッソン)
しかし俺は、いつもと違う階段を登ったので、初めて見た景色に出くわすこととなった──。
ここでなぜか俺の頭のイメージの中では潮風が吹く海辺に居る。
俺って超詩的ッ!
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