翼が二羽

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 俺はウインクしたあと、丁寧に挨拶をして椅子の向きを綺麗に直してから帰ろうとした……、その去り際にこの女がボソリと呟いた。 「同じだよ……。多分」 「おんなじ?」  一体全体どういうことだ? LHRって名前の授業が、ただ減ったってだけのことか? 謎は深まるばかりだ。  それに時間割に書いてあるのはLHRだ。それしか書いていない。  HRなら分かる。でもそれは書かれていないかった。 「中学と同じだと思う。多分」  ん? なんだ俺と同じ意見かよー。ほぅ俺の考えは正解じゃないか。 「やっぱりそうか。格好つけやがって! なんか大したもんなんかと勘違いしちまったぜ。じゃあな…………っと、八木さん?」  俺も礼儀をわきまえた女には丁寧語は使えるんだぜ? 俺はこのお行儀の良い女、八木さんに礼を言って、礼を言って……、礼を……あぁ、忘れてた。 「八木さん。ありがとなっ!」  そして、アディオスした。  また頼むぞ八木!  ◆既に六時間目が始まっていた──。 「あそこでチョークでなんか書いてるオバさんの、年齢あてゴッコでも始めようか? まずお前からな~」  小声で隣のツンケンした女に、退屈しのぎを提案した。 「自分でやってれば~?」  ほらこれだ、女は。  それはもうゴッコなんかじゃねぇ。 <一人で考え事> って遊びだよ。お嬢ちゃん。 「あんた……」  ん? なんだ言ってごらん。クラスのメイトだから気遣い無しなぁ~。 「いつも、うるさい──。喋りかけないで。友達居ないの?」  こいつには俺と阿久津の熱い友情が見えてないらしい。まあお前とは友達にはなれないかもな。バーカ。 「もう、お前とは喋ってやんねぇー」 「そうしてね。これからも」  全くなんて言い草だ。入学して早々にヤナ奴に絡まれたもんだ。  本当に変な女だ──と、思ったんだが、少ししてから女の方から話しかけてきた。  なんだよ! 気取りやがって、もったいつけてたのかよッ。ぶりやがって。 「あんた──ぼっちなの?」  ”ぼっち?” なんの遊びだ? 流行ってるのか?  俺は最近の遊びとか流行に疎い。阿久津でも知ってることを俺は知らなかったりする。でも聞くのも恥ずかしい。俺は適当に話を合わせてやった。 「ああー、あれな。そうだよー」  女は、えっ! と言う顔をした。
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