小さな公園

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小さな公園

 不況でリストラされた。  女房に伝えなきゃとは思うのだが、どうしても言い出せず、今日も出勤するふりをして家を出てきた。  しかし、こういう時って、本当に公園に来たりするものなんだな。  行く宛なんかある筈もなくて、解雇の翌日に町をうろついていたら、人気のない小さな公園を見つけた。  二つ並びのブランコと小さな滑り台、鉄棒と砂場。それだけが置かれた小さな公園。  時間帯のせいか、利用者は誰もいない。  知り合いはむろん、赤の他人とすら顔を合わせたくなかったから、誰もいないことに安堵して公園内に踏み入った。  あれから一週間、この小さな公園のブランコが俺の昼間の居場所だ。  こんなふうに時間を潰してる場合じゃないのは判ってる。  まず女房にリストラされたことを告げて、ハローワークに足を運び、次の就職先を見つけよう。そうするべきだ。  でもここに来てこのブランコに腰を下ろすと、総てがどうでもよくなっていく。もう何も考えられなくなる…。 * * * 「おい、あの話、聞いたか?」 {話? 何のだ?」 「この前リストラされた総務のXXさん、行方不明になったんだって。奥さん、何も知らされてなかったみたいでさ。訪ねて来て、初めてリストラされたこと知ったらしい」 「うわー、そりゃまた…」 「捜索願を出した方がいってアドバイスして、お引き取り願ったらしいけど…帰って来るかな」 「微妙だな。クビ切られたって言えずに逃げた訳だし」 「で、この話、実は続きがあるんだけど」 「どんな?」 「営業の奴が外回りの途中で、公園のブランコでうなだれてるXXさんを見かけてさ。その時は行方不明のことは知らなくて、行き場かないから公園で時間潰してるのかと思って見流したらしいんだ。でも、奥さんが訪ねて来たって話聞いて、もしかしたらそこの公園なんじゃないかって、案内してあげたんだと。そうしたら…」 「そしたら?」 「公園自体、そこになかったんだ」
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