2/6
前へ
/24ページ
次へ
 それでも、妻はそんな生活になんら不満を言うことなく、それどころか先ほどのように、私のちょっとした体調の変化にも気を使ってくれている。間違いなく、私には不釣合いな、出来すぎた女房だと言えるだろう。私自身、頼子が何を好き好んで私のような男と暮らしているのか疑問に思うくらいだ。 「あなた一人じゃ暮らしていけないでしょ? ほっとけないもの」というのが頼子の言い分なのだが。これがいわゆる母性本能というものなのだろうか。いずれにせよ、今の私が小説を書き続けられているのも、全て頼子のおかげであり。その頼子が私より年下でありながら、常日頃から私に対して母親のような言動を取るのも致し方なしというわけなのである。  しかし。それにしても、ここのところ続いている腹の不快感には、ほとほと参っていた。いわゆる腹を下したとか消化不良とか、そういった感じではない。なんというか、私の胃や腸が、何かを訴えるかのように、腹の中でふるふると軽い痙攣を起こすのだ。三日前くらいまでは、それは時たま感じるくらいで済んでいたのが、昨夜あたりから急に酷くなり、今では落ち着いている状態より痙攣を起こしている時間の方が長いような気さえする。 これはやっぱりあれがいけなかったんだな……あんなものを腹に入れるなよと、胃腸が私に訴えかけているんだなと。私は片手で腹をさすりながら、この不調が始まる原因になった夜の事を考えていた。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加