第1章 商店街

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筆箱の横に置いていた時計の針は 10時5分を指していた。 私はそれを見て広げていた 勉強道具をカバンにつめた。 朝のラッシュが終わったのだろう コーヒー屋のおじさんは 背伸びをして一息ついた。 「今日もサボりかい?」 「サボりじゃないよ おじさん。 ちゃんとここで勉強してる」 「ふふっ。まあまあ、 いってらっしゃい」 「いってきます。」 いつものやり取りだった。 私を外見で高校生だと当てたのは コーヒー屋のおじさん ただひとりだった。 私は高校にあがると同時に 金髪に染めた。 髪の毛も切り、ピアスも あけた。 ピアスの穴は傷つく度に 増えていった。 恋愛がうまくいかなかったり、 親から軽蔑されたり。 そんな些細なことでもピアスを 開けていたらいつの間にか もう開ける場所がないくらい 耳はピアスで埋まっていた。 そんなんだから“高校生”って言っても 私を知らない大人は 信じなかった。 私が威勢のいいのは 外見だけで、 中身はボロボロそれでいて 弱虫だった。 ただ優しくありたかった。 でも優しさがわからなかった。 親には幼い頃から 距離を置かれていた。 それでも食費や学費を 出してくれていたから 感謝はしていた。 ただ周りの友達と どうしてこんなにも違うのだろうと 悩んだ時期もあった。 死のうとも思った。 今となってはどうでもいい話だけども。
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