三、生贄

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 玉麗に宿った新しい命を守る。  もう迷う余地はどこにもない。  そこから紅は、躊躇う玉麗と陽春の二人を説得し、この3人以外に知られることなく身代りの計画を密かに立ててきた。  陽春から、紅を含め三人で逃げようと提案もされたが、生贄が誰もいなくては事の露見は早く、追手がかかっては逃亡は現実的ではない。  まして、玉麗は身重なのだから。  紅が身代わりとして霧の城に行く。  それは紅の計画においては決定事項であった。  紅が玉麗に代わって生贄となり、玉麗と陽春は村を出る。  同時に村から姿を消す陽春と「紅」は、青河に身を投げたように川岸に履物を並べて細工する。  村長夫婦のみならず陽春の両親まで悲しませることになるだろうが、実際に子を亡くすよりはどれほどいいだろうか。
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