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どうしても紅の決意が変わらぬと分かった時、玉麗は泣き崩れ、陽春は地面に額をこすりつけて紅に頭を下げた。
二人が紅の計画をのんでくれたことに、紅は喜びさえ感じていた。
例え、自らの身が、化物に食われることになったとしても。
紅は死すら喜んで受け入れるつもりだったのだ。
そう、死すら。
そこまで考えて、紅は暗い樽の中、首を傾げながら上を見上げた。
月明かりだろうか、幾筋かの白く頼りない光が蓋板の隙間から漏れている。
じりじりと虫が鳴く声がする他はとても静かだ。
…何事も、起こっていない。
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