一、霧の城

2/3
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/152ページ
 二十年に一度、『霧の城』の主に若い娘の生贄をささげる。  それが、このあたり、宵(しょう)の国、青河州青龍山(せいがしゅうせいりゅうざん)のふもとに点在する小さな村々に課せられた宿命だった。  霧の城というのは、青龍山の山腹に建つ古い大きな城のことである。  正式な名を青龍城といい、青河州が宵に支配される以前、かつてこの地を治めていた龍氏の城であったのだが、青龍山の中腹より上は一年を通じて霧に覆われていることが多く、ふもとの村々に城がはっきりと姿を見せることは珍しい。  それで霧の城と呼ばれるようになった。
/152ページ

最初のコメントを投稿しよう!