二、入れ代わり

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「紅…本当にごめんなさい…」  背が高く痩せたほうの少女が泣き崩れるようにして、もう一方の少女に寄りかかった。  紅と呼ばれたやや丸顔の少女は、その大きな瞳をキュッと細めると、彼女がさきほど玉麗様と呼んだ少女の肩を一度だけそっと撫で、自分から引きはがすように押しやった。 温かいながらも質素な自分の上掛けと、玉麗の真っ白な絹の打掛を交換する。 「泣かないでください、玉麗様。あたしは絶対大丈夫だから!食べられたりなんかしません。どんな化け物からだって、この逃げ足の早さで逃げ切ってみせます!知ってるでしょう?あたし、こう見えて走るのは早いんですよ!」  紅は自慢げな笑顔すら見せてドンと自らの胸を叩いてそう告げると、その場に玉麗を残して広場の中央に不自然に置かれた大きな樽の中にえいやっと飛び込む。
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