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「約束して美咲。俺が出来なかった分も含めて、恵美をいっぱい幸せにするって」
「うん。もちろん、絶対幸せにするよ」
今まで樹生に半分背負ってもらったものをしっかりと引き受けて、私は恵美を幸せにする。
その決意を真剣に表情で樹生に返すと、樹生は「まぁ母親って、子供のためになら怖いくらい必死だからな」と言った。
樹生と私はきっと、今同時に自分たちの母親のことを考えたのだろう。
一瞬、同じ秒数ほどの間を作った私達はその後、静かに笑い合った。
樹生が玄関ドアを開け、出る間際に私に振り返る。
「美咲と恵美が幸せになれるなら、俺も新しい恋でもするよ」
すぐに玄関ドアはパタンと閉じられて、樹生の残した言葉だけが胸に強く響いた。
樹生のその言葉が樹生にとって真実なのか、それとも私と恵美のためについた嘘なのかは分からなかった。
でも、『この先一生恋はしない』と言って私の気持ちを縛り付けた言葉を打ち消す意味があることだけは分かる。
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