02.恵吾と美咲の罪

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※ 翌日、MOINdesign株式会社の海外営業部内にある会議室に部の社員が全員集まると、会議室はかなり手狭になった。 それでも、この春に新たに立ち上がった海外営業部だけに、他の部署に比べれば人数はかなり少ない。 私はこの事業に間接的に関与しているだけだから発言権はあまり無いのだけれど、佐伯部長が私を社員同様に扱ってくれることもあり、社員たちと一緒に会議に参加していた。 自社ブランドショップの海外進出に向け、現時点の進捗状況と今後の事業展開について話を進める佐伯部長は終始意気揚々としていて、この事業への熱意がひしひしと伝わってくる。 「国内の自社デザインだけじゃ、海外の店舗で通用しないんじゃないかと懸念されている話は前にしただろう?デザイン部とも検討して、やはり海外向けのデザインを開発しようという話で決定した」 海外営業部内の話し合いが一通り終わった後、佐伯部長は他の部署の進捗状況も報告し始めた。 「だが、当社は海外市場については経験が浅いから、アドバイザーを依頼しようということになってな」 そう言いながら、佐伯部長が恵吾の方を見て、嬉しそうに笑う。 「アドバイザーは香織さんが引き受けてくれたよ。遠野から一声掛けてくれてたから、話が早かったよ」 「そうですか」と淡々と返す恵吾以外の社員は「良かったですね!」と盛り上がり、私1人、『香織』という名前に固まるほかなかった。
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