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私と恵吾の関係は、あの頃と何も変わっていないのだと痛感する。
重い足取りで海外営業部の会議室を出ると、後ろから肩を掴まれて私はビクッと身体を硬直させる。
振り向くと、恵吾が営業スマイルで立っていたから、私は思わず息を止めていた。
「美咲さん。今から資料室に行くから、手伝ってくれる?」
そう言って笑い掛ける恵吾の気持ちはやっぱり私には読み取れない。
「……私…ですか?」
「うん。英語の資料を探したいから、美咲さんに手伝って欲しいんだ」
そう言われてしまっては断ることもできなくて、「……分かりました」と答える。
海外営業部から出ると、私は恵吾から少し距離を取って資料室へと足を進ませた。
資料室はデザイン部へ続く通路の途中に配置されていた。
資料室の中に入った恵吾は奥にあるスチールラックに近づいて、高い位置にある大きなファイルを取る。
「美咲、こっちに来て」
言われたとおりに近付くと、恵吾は手に持っていた大きなファイルを私に渡す。
「あとは、これと、このファイルかな」
「あっ、わぁ‥‥‥っ」
恵吾に次々と大きなファイルを手渡されて、私は声をあげた。
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