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心地よい春風が私の頬や髪を撫でるのに、心は穏やかになるなんてほど遠くて、虚ろな目で空を見上げる。
昼休み。私は少しでも会社から離れたくて、近くの公園のベンチに座っていた。
ベンチに座って、もう数十分は経っているのに、広げた弁当箱の中身は開けた時とさほど変わっていなかった。
ため息が零れる。そして、雲行きの怪しい空をぼーっと見上げる。気付けばその繰り返し。
『今日も一緒に帰ろうね』
そう言って、にっこり笑った恵吾の顔が思い浮かんで、胸の中が騒めき立つ。
午後は恵吾の結婚相手である香織が会社に来る。それなのに、それでも私に一緒に帰ろうと誘うのは何故なんだろう。
寂しいから?繋ぎ止めたいから?
恵吾があの頭の中で、何を考えてるのか本当に掴めない。
第一、一緒に仕事で外勤するわけでもないのに、わざわざ帰り時間を合わせて帰ることのがおかしな話。
いくら考えても深みにはまるだけで、とにかく恵吾が何と言おうと、今日は無視して1人で帰ろうと私は決めて、ベンチを立ち上がった。
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