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「恵吾先輩と香織さんって、相変わらず仲良いんですよね。あの2人、結婚して‥」
「知ってるよ!」
宇川の説明に、私は思わず声を出す。
「あ、そうですよね。前の職場で一緒でしたもんね。あんなに仲良いのに、離‥‥‥美咲さん!?」
嫌、聞きたくない! 2人の話なんて、聞きたくない!
私は咄嗟に耳を抑えて、その場にしゃがみ込んでしまっていた。
「美咲さん、大丈夫ですか!?」
自分が信じられなかった。認めたくなかった。許せなかった。
恵吾と香織の仲の良さを見せつけられて、動揺することなんて、あってはならないことなのに。
まさか自分がこんなにもまだ恵吾に執着しているなんて。
自分から関係を終わらせたのに、恵吾と彼女との関係を受け止めきれていなかったなんて‥‥。
「美咲さん、本当に大丈夫ですか?」
宇川の心配そうな声に、自分の駄目さ具合が身に染みる。
「ごめんなさい……。ちょっと貧血を起こしたみたいで……」
立ち上がった私の顔を見た宇川が「すごく顔色悪いですよ」と心配する。
「ありがとう。でも時間が立てば、きっと治ります」
私は無理やり笑顔を作って、一歩一歩進む度に心を落ち着かせながら、ゆっくりと席に着いた。
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