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その数時間後。
私はすでに自宅のリビングソファで横になっていた。
私の様子を心配した宇川が佐伯部長に私のことを報告し、佐伯部長が「今日は早退した方がいい」と私を促したからだった。
早退したとはいえ、実際に具合が悪いわけじゃない。
せっかく早く帰宅したのだから、睡眠時間を削ってこなしている家事を昼間に済ませられるチャンスなのに、私の身体は思うように動けなかった。
考えたくもないのに、恵吾と香織が笑い合っていた姿が脳裏を掠める。
そしてその度に、とてつもなく息苦しくなる胸の痛みは止めることができない。そんな痛みを感じてしまう自分が許せなかった。
携帯電話がメールの着信を知らせて、私はおもむろに画面を開く。
『体調悪いの?大丈夫?電話して』
送られてきたメールを見た後、胸の痛みが少し和らいだことに気付いてしまった私は、さらに自分が許せなくなって、消えてしまいたくなった。
このままでは本当に良くない‥‥。
自分が恐ろしくなった私は恵吾からのメールを無視して、慌てて台所に立つ。冷蔵庫から食材を取り出し、夕飯の支度をし始めた。
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