02.恵吾と美咲の罪

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夕飯を済ませ、お風呂に入り、めぐみを寝かしつけるまでの時間は慌ただしくて、時間に流されるまま育児をこなす。 めぐみがスヤスヤと寝付いて、寝室からリビングに戻ると樹生はお風呂に入っていて、私は静かなリビングのソファに腰を下ろした。 放置していた携帯に気付いて手に取ると、携帯電話が途端に振動し始め、画面に表示された名前に動揺し、私は携帯を床に落とす。 恐る恐る拾い上げた携帯はまだ振動していて、私はたまらず拒否ボタンを押していた。 すぐにまた携帯が振動して、私はその振動が何を意味するのか分かってしまう。 予想通り恵吾から届いていたメールを開くと、1枚の写真が画面に映し出されて、次の瞬間、私はもう泣いていた。 押し殺した感情を呼び醒ますのは、私が何度も手を伸ばし、何度も眺めたあの写真。 携帯画面の中に写る私は恵吾に背後からキスをされて、恵吾に深く愛されていた。 何度もそれを再現した恵吾の腕の力強さまで身体が思い出して、全身が痺れ始める。 止めて‥‥‥。思い出させないで‥‥‥。私にまた罪を犯させないで‥‥‥。 「なんだか、また恋でもしてるの?」 突然投げられた声に私が振りかえると、風呂上がりの樹生が立っていた。
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