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「美咲。結婚しよう」
恵吾が静かな声が、恵美の寝息に重なって、耳をくすぐる。
穏やかでいて、優しい焦りのないその恵吾の顔をそういえば5年前も見たなぁと、私はぼんやりと考えていた。
あの時、あの誓いを疑うことなく信じることが出来たかといえば、きっと難しい。
大好きな恵吾の側にいるためには、自分の気持ちに全て正直になることは怖すぎた。
愛を貫くために、嘘が必要だと思っていた。
でも、今は嘘をつく必要がない。
そして、やっと私は恵吾の思いを信じられるのかもしれない。
「まだ美咲の本当の気持ち、聞かせてもらってない」
恵吾は黙っている私を見て、少し不安そうな顔をした。
私はそんな恵吾の顔を見て、穏やかで優しい笑顔を返す。
「恵吾、愛してる。
私と結婚してください。
恵美のパパになってください」
心から偽らず、心から愛してる人を疑わず、愛していると言えることは、なんて素敵なことなんだろう。
私、今初めて、恵吾に告白できたような気がした。
恵美は眠ってからも、恵吾の手をギュッと握ったまま離さなくて、私達はその夜、川の字で眠って、朝を迎えた。
END
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