02.恵吾と美咲の罪

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恵吾とまだ出会っていなかった5年前の春。 それは辛いことが重なりすぎて、人生二度目にして、神様を恨んだ季節だった。 派遣されていた会社で社内恋愛をしていた私は派遣契約期間終了と同時に呆気なく、その当時付き合っていた恋人に捨てられた。 派遣期間は約3年間。その間の半分以上は愛を育んでいたから、関係は続くものだと思っていたのに、終わりは本当にあっけなかった。 派遣期間終了日、「俺たちの関係も今日で終了ね」と、それはもう簡単に捨てられたのだ。 こんなにも簡単に関係を終わらせることが出来るものなのかと、事実を受容できずにいた束の間、女手一つで私を育ててくれた唯一の家族である母が病気で死んだ。 それこそ受け止めることなんて出来やしない。 このまま静かに私がこの世から居なくなっても誰も気付かないじゃないかと思えるくらい何にも無くなった私は、通訳エージェントの指示ですでに新しく派遣される会社が決まっていた。 「今日からこの会社に通訳として働いてくれることになった田辺さんだ」 会社の人事部から紹介を受けた私は「田辺美咲と申します。よろしくお願いします」と、私に注目している職員たちに頭を下げる。 派遣初日それに就業始め、本来ならやる気満々な勢いを振り撒いたっていいはずなのに、どん底の気持ちから抜け出せていなかった私は笑顔すら作れていなかった。 たぶん会社の職員たちは、緊張しているのだろうと暖かい目で見てくれていたと思うけど、1人だけそう思っていない人が居た。 配属された課の主任、遠野恵吾<とおのけいご>だった。
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