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「元々、畏まる相手じゃないし」
「ひでー」
先輩が動く度に、ベッドが軋む。
その音に、いちいちドキドキしてしまう自分を殴りたい。
「あのさ」
後ろにいるから、どんな顔をしているかわからない。
だけどその声が、さっきとは違ったから。
私は思わず、背筋を伸ばす。
「小林とは、相沢が思っているような関係じゃない。それに、もちろん付き合ってもいない」
先輩はしっかりとした口調で、一言一言言葉を落とす。
変な関係じゃない?
付き合っていない?
でも、じゃあ何で?
私は、背中を向けたまま口を開く。
「何で、ミカはお父さんに彼氏だって紹介したの?」
「その理由は、明日話すよ」
なにそれ。
肝心な事は、また明日って。
「じゃあ、家に行ったのは?」
「それも、明日話す。だけど本当に、小林とは何もない」
それも、また明日。
「それでどうやって信じろって言うの?」
「相沢…」
先輩の声が、後ろから聞こえる。
悲しそうに、揺れた声が。
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