プロローグ

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「話しがあるんだ」 付き合って二年になる三つ年上の彼氏。 真田健<さなだたけし>からプロポーズされたのは昨年の秋だった。 大学生の私が卒業すると同時に籍を入れようと。 そしてさっき高級フレンチレストランに呼び出された私は、来年の卒業後の話しを本格的にするものだと思っていた。 真田は仕立ての良いスーツの上に、高そうなコートを羽織り。 ピカピカと磨かれた黒い革靴で、白い雪を踏みにじる。 そして目の前に見えるこれまたピカピカに磨かれた、黒い高級外車に乗るとエンジンをかけ暖房をつける。 吹き出し口から流れる、冷たい風。 もう慣れた、芳香剤臭い車内で真田は言った。 「別れよう」 そして、畳み込むように 「子どもができたんだ」 と。
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