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雨が降っていた。その日、俺は薄暗い部屋で昼寝をしていた。
すると俺の家に姫様が訪ねて来た。
居留守を使おうかと思ったがあまりにも切羽詰まった様子で扉を叩くもんだから仕方なく中に入れてやった。
姫さんは雨に濡れてその滝のように流れる豊かな金髪も白い肌も泥だらけになっていて青いドレスも汚れていた。
姫さんは車椅子に乗っていた。
生まれつき足が悪く、歩けない姫さんを王は大事に可愛がっていたらしい。
今まで大事にされてきた姫さんがこんなになるまで汚れて、城下にまで1人で来るなんて何かあったとしか言えない。
姫さんに安物のインスタントコーヒーを淹れてやる。
口に合うかわからんが、身体は暖まるだろう。
姫さんはコーヒーを飲むとまず一言「苦い」と言った。
それでも喉が乾いていたらしくちびちびと苦いコーヒーを飲む。
「なぁ、姫さん どうしてこんな所まで護衛も無しに1人で来たんだ?最近は魔物が増えて危険だって言うのに」
丁度今から1ヶ月前に大地震があった。
いや、あれは本当に地震だったのかよくわからない。
だけどその日からこの世界は「普通」じゃなくなった……その影響を受けてか、魔物の出現が相次いでいる。
姫さんは大きな碧い瞳を揺らし、俯き加減に事情を話し始めた。
「…お願いします、村人さん 今から私が話すことは誰にも言わないでください」
これが全ての始まりだった。
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