一話

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 この学校は一つの棟に一つの学科が入っている。そしてその棟を繋げている唯一の架け橋が踊り場だった。学生全員を収容できるだけの食堂もあるため、踊り場はものすごく大きい。 「結局、野次馬が増えたな」  ガラス張りのケージの外には、たくさんの生徒が群がっていた。ガラスは魔法で強化されているため壊れることはまずない。が、ガラス張りのため晒し者である。 「まあいいじゃないか。兄さんの力を見せつけるいいチャンスだ」  薫はトラフィックギフトを操作しながらそう言った。 「悪いんだが、俺は軍事科から移った際にトラフィックギフトを返上してる」 「知ってるよ」  ポケットから出した腕輪を、俺に投げてよこした。これさえなければ断れると思ったのに。 「用意良すぎだろ……」  今日はため息ばかり出る日だ。そう思いながら、トラフィックギフトを腕に付けた。俺がじいちゃんの家で使っていた、じいちゃんからもらったもの。一般科に移った際に返したはずなのにな。 「兄さんは相変わらずストライカーなの?」 「俺はこれ以外やったことないんだ。ほっとけ」  トラフィックギフトを操作し、空中に半透明のコンソールを出す。ステータス画面を見れば、あいも変わらず平凡を下回る能力値で、ここでもまたため息が出る。 【鳴神語(なるかみかたる)、体力値B、攻撃値B、防御値C、魔導値E、抵抗値D、敏捷値C、感性値D、頭脳値C、エンハンスゲージ2】  基本的にはこのまんまの能力。体力は耐久力、攻撃は攻撃力、防御は防御力、魔導は魔法攻撃力、抵抗は魔法防御力、敏捷は反応速度や運動神経、感性は感情の波の大きさ、頭脳は頭の良さや回転の速さだ。エンハンスゲージの本数というのは劇的に変わることなどなく、先天的に持つ本数が全て。つまりこれも才能と言っていいだろう。  こういうふうに評価されると、能力の低さに愕然とする。俺よりも能力が低い奴はいることはいるが。
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