一話

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『鳴神の面汚し』  その言葉が頭をよぎる。昔からそうやって、後ろ指を刺されてきた。今でもなおトラウマであり、俺が自信を持てない理由でもあった。  実家が嫌いな理由も、間違いなくそこにある。  毎日塞ぎ込み、徐々に外に出なくなった俺を救ってくれたのはじいちゃんだった。俺は小さい頃から実家を離れ、じいちゃんと一緒に住むようになった。ごくたまにねえちゃんや薫も来ていたな。  じいちゃんは世界的にも有名な軍人。今は退役しているが、指導役兼監督責任者として、まだ軍部には残っているらしい。  コンソールをスクロールさせ、現在の順位を確認した。 【学年別考査順位四百七十三位、個人実技順位四百七十三位、総合順位二千三百位】  学年別考査順位とは、期末考査の順位。個人実技順位は、期末考査と共に行われる実技試験の順位だ。総合順位とは軍事科の生徒が学年に関係なく、同じ筆記試験、同じ実技試験、同じ適性検査を受けて順位を決める校内総合順位というものがある。基本的には生徒の上下はこの総合順位を使ったりすることが多い。  俺の場合は一般科なので軍事科の期末考査はしてないし、実技試験だって受けていない。そのため順位は最下位だ。総合順位だけは最下位ではないが、二年前のデータを継承しているため、当時自分よりも下だった者や後輩たちに抜かれ放題だ。一応軍事科の生徒は一学年に五百人程度で、それが五年生まである。つまり最低順位は二千五百位くらいだろうか。  軽くため息をついたが、まあ仕方がない。 「さあ始めようか」  薫の左手にある腕輪が、青い光を放つ。 「満足するかどうかはわからんがね、これっきりにしてくれ」  コンソールを操作し、自分用の設定に書き換える。二年前のままだから、多少いじらないと上手く操作できないだろう。  最後のロールセレクトで『ストライカー』を選ぶ。半透明なコンソールが消え、腕輪が青く光り出した。  ストライカーは近接攻撃型のロールであり、身体能力の上昇も攻撃力が一番高い。魔導値や抵抗値はそこまで高くならないが、トランスフィクサーを使っている時点で魔法は使える。得意じゃないから使わないが。
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