問答と疑惑

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ーーーあの時の… “蒼ちゃん…ごめんね… すごく…痛かったよね… 守ってくれて…ありがとう…” 永遠子の涙が滲んだ表情と声が 鮮明に浮かび上がり 焦がれた胸の熱さが身体中に広がる 俺の為に流した永遠子の涙 心の熱さと身体の熱さが 交ざり合っていく感覚がして… 「…トワ……」 無意識に口から漏れた呼び名に 俺は思わず口元を手で押さえた 俺の根幹に常に在る他の誰でもない 永遠子の存在を実感して… ーーー守りたい 傷付ける全てのモノから守りたい、のに… 誰にも奪われないように “俺だけのモノにしたい” 生まれた衝動を否定しながら 冷静な思考がそこに辿り着いた時 俺は思わず額を左手で押さえた 「…独占欲……」 気付かないフリをしていた願望を そのまま言葉にしたら 再び焦燥感が一気に立ち込めた ーーー最悪だ 俺は否定したかった 無かった事にしたかったんだ 不可解な衝動も 理解不能な胸の内も ーーーあの不整脈も… 永遠子に対して感じたモノ総て それを認めたら失う 『何かが壊れる』 誰かが必死に叫んでる気がした ・
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