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この女は役目を遂げられなければ
恐らく三神家を追い出されるのだろう
その為だけの人間なのだから
もっとマトモな仕事がある筈なのに
三神家に仕えてきたというだけで
この女も三神家という権力に
縛られ洗脳されている人間という事だ
この女を拒絶したところで
また別の人間が同じ事を仕向けてくる、か…
それはそれで鬱陶しい事この上ないが
俺に妥協を提案してくる
この女も結局は三神家の犬なんだ
俺の相手をする為に選別されて
三神家で働いていたのなら…
永遠子に対して優しかったのも
その為だけだったという事か…
永遠子に優しくすれば
俺が気に入るとでも思ってたのか
永遠子はこの女に懐いてたのにーーー…
渦巻いている苛立ちは
永遠子の事を考えれば更に増した
俺は大きく溜息を吐いてから
伸ばされた女の手を振り払い…
「勘違いしないでください。
僕があなた方を受け入れる事はない」
振り払われた山田小夜は
唖然とした表情を浮かべていて
俺の同情を待ち望んでいたらしい
「同情が欲しいなら
他を当たるといいですよ。
僕はそれを持ち合わせてはいない」
同情など買えないと悟った女は
俺を見つめながら唇を噛み締めて
対抗するように口を開いた…
「代々、三神家の当主になる方は…
この夜伽を拒む方はいなかったと聞きます。
蒼志様も慣例に習うべきではありませんか?」
慣例という言葉を使い
まだ俺に干渉しようというのか…
怒りや苛立ちが憎らしさに変わり
それに比例するように俺は口角を上げた
「“従わない者は切り捨てる”
古い家柄や権力者にはよくある傾向です。
僕はそれでも一向に構いません」
こんなに薄汚く歪んだ世界で…
こうして生かされるよりはマシだ
その低い声を突き付けると
山田小夜の顔が徐々に青ざめていき…
「今すぐ僕の視界から消えてください。
それともまだ侮辱的な言葉で
罵られたいのなら要望に応えますが…?」
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