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そう呼び掛けて
その女性は再び院内へと踵を返し…
「いえ、診察に来た訳じゃ…」
俺が口を開くも女性は院内の待合室から
奥の方へと歩いていって…
「…お前はまた。
もう臨月なんだから少しは大人しくしとけ」
「だから今から検診に行くの。
それより…お客様…かな」
ーーー臨月…
数秒後に何やら話し声と共に
院内の奥から現れたのは
俺と同じくらい長身の男性医師
黒髮に整った顔立ちをしていて
Tシャツに白衣を着て
受付の窓口から出入口に佇む俺を捉えた
「…患者、ではねーな」
男性医師は俺を見ただけで
それを察してくれたようだ
俺は待合室に足を踏み入れて
夫婦と見られる二人を眺めた
「突然、すみません。
以前この場所にあった
『蓮見医院』を訪ねてきたのですが…」
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