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俺が来訪理由を告げると
男性医師は妻である身重の女性に耳打ちして
受付の中から待合室へと出た
「どうぞ、掛けてください」
男性医師は待合室の中にある
待合用のソファーを勧めて
俺は会釈をしながら腰を下ろした
男性医師はその斜め前に座り
小さく息を吐いた
「お前、“三神蒼志”か…」
俺の名前を知る男性医師は
前髪を掻き上げて
こちらに視線を向けた
ーーーあぁ…
この男性はもしや…。
「…僕を御存知ですか」
素知らぬ顔で俺が口を開くと
男性医師は軽く頷いて
ソファーの背凭れに寄りかかる
「あんたの弁護士仲間の樫山と
知り合いってだけだ。
あいつは今、地元に帰ってるが」
男性はそう言った後に
腕を組んで再び溜息を吐いた
「ここに在った蓮見医院は
2年くらい前に売りに出てたのを
俺がそのまま買い取った。
蓮見は今、海外にいると聞いてる」
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