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俺が呟いた声に
男性医師は目を細める
「まぁ、あの老人のする事は
突飛もねぇ事が多いし。
軽々しい立場でもねぇからな…」
鷹宮の御大を知る男性医師は
呆れたように語り…
「御大の後継になれば
色んなモンが手に入るだろうが…
きっと失うモノもあるだろう…」
ーーー失うモノ
その言葉に不意に
心臓が低く音を立てた
「…だが…あの人の
『人を見る目』だけは確かだ」
男性医師は鋭い眼差しで
佇んでいる俺を見据えて…
「お前がどれだけの地獄を生きて
這い上がってきたかを
鷹宮の御大は認めてんだろ」
ーーー地獄を…
男性医師が放った言葉に
身体中に痛みが駆け抜けた
でも俺はーーー…
俺は無意識に微笑み
拳を微かに握り締めた
「俺は地獄の中に『幸せ』を見ました…」
俺が告げた言葉に男性医師は
二重瞼の切れ長の瞳を大きく見開いて…
ーーーその時。
「お待たせしました。
アイスコーヒーで良かったですか?」
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