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俺が三沢可南子に告げると
二人は躊躇いながらも墓前から離れていく
人が死ぬ、と言う現実に
初めて身近で触れた永遠子には
それが父親であるという事実も
実感がなかったのかもしれない
「…みんな…死んだら…
こうやってお墓に入って眠るんだ…
ここに来れば会える?」
三沢家の墓石の前に佇み
永遠子が不思議そうに俺に問い掛ける
ここに来れば会える…
ーーーそれは出来ない
晴彦おじさんには二度と会えないのだ
俺は込み上げる哀しみと
寂しさを押し込めて首を横に振った
「…蒼ちゃんがもし死んじゃったら…
お墓参りに来ても…
蒼ちゃんにも…もう会えないの…?」
これ以上ない、という程に目に涙を溜めて
眉を下げて悲しそうに俺を見上げた永遠子
俺の事でこうまで表情を崩して
感情を露わにする永遠子が…
ーーー可愛くて仕方なかった
幼いながらも胸に在る愛しさを込め
永遠子の頭を優しく撫でる
「…俺が死んでも…
お墓参りはしなくていい…
俺はそこにいないから…」
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