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ーーーその瞬間
哀しみや寂しさの中に
生まれる嬉しさ
そう言ってくれた永遠子の
二重瞼の澄んだ瞳はどんなモノより綺麗で…
荒みかけた俺の心まで
浄化してくれるようだった
ーーー愛しさが
知らず識らずと降り積もる…
俺は永遠子の額に
自分の額を寄せてそっと静かに重ねた
「俺も永遠子だけは忘れない
どんなに遠く離れてても
二度と会えなくても心だけは繋がってる…」
忘れなければ
心だけは繋がっていられる
たとえ人形のように生きても
人間としての俺の心は…
ーーー“永遠子の中に”
それが俺の願いだった
今思えば…
子供のただの口約束
それでも俺には
何より嬉しくて胸がいっぱいで…
三沢晴彦が亡くなり
互いの心に空いた隙間が
満たされるような気持ちだった
それから…
俺と永遠子は温かく優しい日々を
共に二人で過ごしていく
でも俺はまだ知らない
ーーーその日々は…
大人たちが非道なまでに創り上げた
優しくて温かくて真綿のような…
“幸せで残酷な箱庭”だったのかもしれない
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