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それっきり、後藤さんの顔も水島さんの姿も見かける事はなくパーティーの会場を後にした。
香澄は欲しかったゲームの箱を抱えてほくほく顔だった。お母さんは私の貰った時計をバッグに入れているせいで、なんだか緊張して電車に乗っていた。
私は後藤さんの言葉が頭から離れなくて、無口なままで家まで帰った。家に着いてからが少し大変だった。
あの時計は間違いなく我が家で一番高価な品物で、私の部屋に仕舞って置くのはどうかなどと、お父さんとお母さんが二人で会議を始めた。
結局は責任を持って私が保管する事と、大学にはつけてゆかない事を約束させられた。もっとも私だってそう考えていたので異論はなかった。
「なんなのよ……いったい」
後藤さんの考えている事はさっぱりわからない。水島さんの表情の意味もわからない。水島さんが先生に好意を持っていたのは間違いないと思うし、そうであれば先生を追い出した後藤さんに従っている理由も、私に対する態度も理解できないのだ。
なんだかイライラしてきた。わかっている、なにがどうなっているのかを知る方法……後藤さんに直接聞くしかないのだ。
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