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「遅かったねぇ」
教室で待っていた瑠香が面白そうに言う。
「もう、そんなんじゃ無いってば」
「へぇ~。遥ちん、照れてる。デートの約束でもした?」
「だからぁ。一緒に勉強する約束しただけだってば……」
にやにやと瑠香が笑う。時計を眺めると塾へ行かなければいけない時間だった。
週に三日、遠回りして塾に通う。今日は憂鬱な数学の日だった。
駅まで歩く間中、瑠香が話し掛けてくる。私が男の子と二人で会う約束をした事が嬉しそうだ。
中二の夏の事は話していない。けれども、私に何かが在った事は気付いている様子なのだ。
見た目の派手さとは違って、瑠香は無神経に入り込んで来ない。
だから私も心地よいのだろうと思う。
「ちゃんと可愛い服着てくんだよ!あー心配だなぁ。遥ちんそう云うトコ、ダメダメなんだからね!」
わざわざ私の前に回り込んで瑠香がダメ押しをする。小姑ってどんな小言を言うのだか知らないけれど、きっと今の瑠香みたいなのだろう。
「わかってるって……」
「ほんとに?じゃあ、伊藤に会う前に写メ送るんだよ。いつかみたいにジーンズにTシャツなんて手抜きはダメだからね!」
「え~!瑠香……小姑みたい」
「小姑でも良いのだ。遥ちんがデートなんて……お母さん嬉しくて」
「ねえ、瑠香?小姑からお母さんに変わってるし……それに、デートじゃ無いってば」
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