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きっと伊藤くんは気がついていたのだと思う。私のペースに合わせるみたいに、少しづつ連絡が減る。
会わないのだから話題も減って、話す事も無くなってしまう。
三月の終わりの事だった。電話の向こうで、伊藤くんの声が泣いているみたいに聴こえた。
「温泉……行かなきゃ良かったかなぁ……ごめん……瑠香ちゃんの事問い詰めちゃった」
「そうなんだ……」
不思議なくらいに私は冷静だった。伊藤くんにあの事を話してしまった瑠香にも、怒りも覚えない。
何処かほっとしている自分がいる。少なくとも、理由すらわからないままで別れるよりマシだと思えたのだ。
「ごめんね……伊藤くん……全部私が悪いんだよ。伊藤くんの事……好きだった……けど無理だったみたい……ごめんね」
「遥ちゃん!僕は――」
「ごめんね……伊藤くん……」
私には、そう答えるより他になかった。私みたいな女に苦労する事はない。
泣きながら、電話を切り、伊藤くんの番号を着信拒否にした。
朝まで布団に包まって泣いた。馬鹿みたいに涙が出て、やっぱり心の何処かが壊れた気がした。
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