六章

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スマホで時間を確認した。もう直ぐ夜の九時になるところで、このまま家に帰れば門限には充分間に合う。 門限……私の門限は、修造先生が決めたものだ。修造先生と水島さんの姿。 何故だかもやもやする。 「もしもし、お母さんごめん。ちょっと遅くなるかも……うん。終電には間に合わせるから」 後藤さんが私を見ている。 「えっと……」 「終電の時間には帰るからね!」 「もちろん!何処行こうか?」 そんな事は考えてなかった。じっと後藤さんの顔を見る。お腹もいっぱいだし、お酒は飲ませてくれないだろうし、今から飲むわけにはいかない。 「後藤さんの家!」 なんだか面倒で、そんな事を言った。後藤さんは目をパチパチして「あっ……うん」そう告げる。 「蔵前に向かってくれるかな?」 「はい、ご乗車ありがとうございます」 運転手さんは、ちらりとルームミラーを覗いて答えた。私の顔を確認するみたいで嫌な感じだった。 「あっ……何処かコンビニの前で止めてくれる?」 「はい」 「うち、遥ちゃんの飲めそうなものないや」 肩を竦めて後藤さんが言う。私は何をしているんだろうか?
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