4256人が本棚に入れています
本棚に追加
スマホで時間を確認した。もう直ぐ夜の九時になるところで、このまま家に帰れば門限には充分間に合う。
門限……私の門限は、修造先生が決めたものだ。修造先生と水島さんの姿。
何故だかもやもやする。
「もしもし、お母さんごめん。ちょっと遅くなるかも……うん。終電には間に合わせるから」
後藤さんが私を見ている。
「えっと……」
「終電の時間には帰るからね!」
「もちろん!何処行こうか?」
そんな事は考えてなかった。じっと後藤さんの顔を見る。お腹もいっぱいだし、お酒は飲ませてくれないだろうし、今から飲むわけにはいかない。
「後藤さんの家!」
なんだか面倒で、そんな事を言った。後藤さんは目をパチパチして「あっ……うん」そう告げる。
「蔵前に向かってくれるかな?」
「はい、ご乗車ありがとうございます」
運転手さんは、ちらりとルームミラーを覗いて答えた。私の顔を確認するみたいで嫌な感じだった。
「あっ……何処かコンビニの前で止めてくれる?」
「はい」
「うち、遥ちゃんの飲めそうなものないや」
肩を竦めて後藤さんが言う。私は何をしているんだろうか?
最初のコメントを投稿しよう!