六章

51/58
前へ
/414ページ
次へ
コンビニで買い物をする。「何が良い?」そんな事を聞く癖に、カゴの中へ片っ端からお菓子やらチョコレートやら飲み物を放り込む。 「もう充分ですってば」 「でも、食べたい時に手元に無いって不安じゃん」 「はぁ……そう言うものですか?」 「うーん。変かな?」 「まあ、変な気もしますけどねぇ」 山積みのカゴを眺めて後藤さんが頷く。面倒なので背中を押してレジへ向かう。 三分も経っていないのに、五千円近くの買い物なのだ。 両手にいっぱいの袋を抱えて、満足そうにタクシーへ乗り込む。なんか笑える光景だった。 「あー。本当にナーンにも無い部屋だけどさ」 隅田川沿いの馬鹿みたいに高層のマンション。ホテルみたいなエントランスには、やっぱりホテルみたいにカウンターに人が居る。 「お帰りなさいませ、後藤さま。お荷物が届いておりますが……」 「あー。後で部屋まで……いや、明日の朝受取るから」 「畏まりました」 私の顔は見ない様にして、丁寧に頭を下げる。エレベーターに乗り込みながら後藤さんが苦笑する。 「あいつら、僕が人を連れてくるのが珍しいんだろうな」 「へぇ……そうなんですねぇ」 「あのさ、遥ちゃん。正直さ、女の子と遊ぶ事は……まあ、あるけどね。自分の生活にまで踏み込ませた事はないんだよね」
/414ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4256人が本棚に入れています
本棚に追加