六章

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「遥ちゃん……拷問だよそれ」 頭の下で後藤さんが、ため息を吐きながら呟いた。 「ふふっそうなんですか?」 どうして私は、後藤さんにこんな意地悪が出来るのだろうか……部屋まで来て、こんな事をすれば横浜の時と同じになる。 変な感じだ。この人は空っぽみたいに思えて、好きにはなれないだろうけれど、まだ残っている私の隙間を埋めてくれる気がするのだ。 修造先生に同じ事をすれば、心臓が破裂しそうな気もする。 歪な私が顔を覗かせていて、呆れている私もいる。柔らかい少し天然のくせっ毛に顎を乗せて撫でてみる。 「良いの?」 「どうでしょう?」 「僕には、きみの事がさっぱりわからない……」 抱き抱えられて寝室へ運ばれる。壊れ物のラッピングを解くみたいに一枚づつ服を脱がされる。 裸にされた胸の間で、相変わらず星が揺れている。 唇を重ねるのに抵抗は無かった。後藤さんの口腔に残る僅かなアルコール。 真似をして舌を動かすと頬が赤らんでくる。冷めている私と裏腹に、弄られる胸の先端は敏感で身体は後藤さんを受け容れているのだ。 くせっ毛の頭は、私の胸の上で上下や左右に小さく揺れる。両手の指先を髪に絡ませる。
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