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香澄がニコニコと笑い私に声を掛ける。
すとんと横に座りながら「ありがと香澄」と告げて頭を撫でた。
可愛い妹だ。今でも、時々私の部屋へ枕を抱えてやってくる。
告白された話やら、友達と上手くゆかないだとか、そんな事をお喋りして眠ったりもする。
私が言うのもなんなのだけれど、香澄はふんわりとしていて私より可愛いのだ。
「お帰り。お父さん」
「ただいま、遥。お誕生日おめでとう」
穏やかな表情でお父さんが微笑んだ。
朝も早い、夜も遅くに帰ってくる。疲れていても不機嫌な顔を見せない優しい父親なのだ。
誕生日の食卓は、ほのぼのとして平穏だった。
最後にケーキを切り分けて、お母さん秘蔵のフォションの紅茶と一緒に皆で食べる。
「受験勉強は、捗ってる?」
あー痛いところを突かれた感じだ。
お母さんが「せっかくの、お誕生日なんだから」と誤魔化してくれる。
模試の結果判定は、芳しく無かった。どうしても苦手な科目が在るのだ。
数学が苦手になったのは中学二年の頃からだ。理由は、誰にも話していない。
大学を出たばかりの若い先生だった。
明るくて、人気者でバスケット部のコーチもしていた。
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