第1章

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「おはよ、遥ちん。朝から暗い顔してんねぇ」 同じクラスの瑠香に肩をポンと叩かれた。メイクにツケマ、短いスカートで完全武装。 夏の間遊びまわった肌は、こんがりと小麦色に染まっていた。 瑠香も大学受験組なのだけれど、取り敢えず何処かに潜り込めればそれで良いらしい。 それでもダメなら海外留学すると笑っている。要するにお嬢さまなのだ。 持ち物もブランド物で、時々は羨ましくなるけれど私に似合う気もしない。 「おはよ、瑠香。ラインありがとね」 歩きながら教室のドアをくぐり、窓際の自分の席に座る。 他の友達からは、昨日誕生日のプレゼントを貰っていたけれど、瑠香は授業をサボっていたのだ。 「そうそう、これ。ねえ、本当にこんなんで良いの?」 瑠香が、小さなペーパーバッグを机にトンっと置いた。 可愛らしいピンクのリボン付き。 私は、不満そうな顔で唇を尖らせる瑠香に笑い掛ける。 「うん、それが欲しかったんだ」 誕生日のプレゼントは何が良い?そう聞かれた私が頼んだのはシュシュだった。 駅前の雑貨屋さんで見かけた、制服のリボンと同じ色のシュシュ。勉強する時に髪が邪魔だと思い浮かべたのがそれだった。 「つまんないの。遥ちん可愛いんだからさぁ。メイクとかツケマとかすれば良いのに」 瑠香は前の席で後ろを向いて座り、私の顔を覗き込んで髪を弄る。 メイクなんて殆どした事が無かった。 「良いの、別に見せる相手もいないんだし」 「そんな事ばっか言ってるから、彼氏も出来ないんだよねぇ」
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