4258人が本棚に入れています
本棚に追加
「おはよ、遥ちん。朝から暗い顔してんねぇ」
同じクラスの瑠香に肩をポンと叩かれた。メイクにツケマ、短いスカートで完全武装。
夏の間遊びまわった肌は、こんがりと小麦色に染まっていた。
瑠香も大学受験組なのだけれど、取り敢えず何処かに潜り込めればそれで良いらしい。
それでもダメなら海外留学すると笑っている。要するにお嬢さまなのだ。
持ち物もブランド物で、時々は羨ましくなるけれど私に似合う気もしない。
「おはよ、瑠香。ラインありがとね」
歩きながら教室のドアをくぐり、窓際の自分の席に座る。
他の友達からは、昨日誕生日のプレゼントを貰っていたけれど、瑠香は授業をサボっていたのだ。
「そうそう、これ。ねえ、本当にこんなんで良いの?」
瑠香が、小さなペーパーバッグを机にトンっと置いた。
可愛らしいピンクのリボン付き。
私は、不満そうな顔で唇を尖らせる瑠香に笑い掛ける。
「うん、それが欲しかったんだ」
誕生日のプレゼントは何が良い?そう聞かれた私が頼んだのはシュシュだった。
駅前の雑貨屋さんで見かけた、制服のリボンと同じ色のシュシュ。勉強する時に髪が邪魔だと思い浮かべたのがそれだった。
「つまんないの。遥ちん可愛いんだからさぁ。メイクとかツケマとかすれば良いのに」
瑠香は前の席で後ろを向いて座り、私の顔を覗き込んで髪を弄る。
メイクなんて殆どした事が無かった。
「良いの、別に見せる相手もいないんだし」
「そんな事ばっか言ってるから、彼氏も出来ないんだよねぇ」
最初のコメントを投稿しよう!