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つまらなそうに瑠香が頬っぺたを膨らませる。
私と違って瑠香は友達も多い。勿論、男友達もだ。二年の時からの親友。
何度か合コンにも連れて行かれたけれど、そんな気になれなかった。
良いな……そんな風に思えても、身体が密着しそうになると決まって口の中に嫌な唾液の感触が蘇るのだ。
「今は受験が大事だもん……数学の成績上げないと」
「だからさぁ。伊藤にでも教えて貰えば良いじゃん。悪くないと思うんだけどな」
瑠香は、教室の端へ視線をちらりと向ける。
成績抜群、背も高くてサラサラの髪。クラスでも人気者の男の子だった。
瑠香が悪戯っぽく笑うのは、伊藤君が私の事を好きなのだと知っているからだ。
「もう……瑠香ってば」
「あのね、遥ちん。受験勉強も良いけどさ、せっかくのエイティーンなんだよ?伊藤となら両方イケるじゃん」
今日の瑠香は、やけに伊藤君を推してくる。
「ねえ瑠香ちゃん?伊藤君に何か頼まれた?」
瑠香がわざとらしく手を合わせて言う。
「正解!今日の帰りにさ、音楽室へ遥ちんを連れてくって約束しちゃったんだよね。じゃあ、そう云う事で」
「ちょっ……瑠香」
にこりと笑い、手を振りながら瑠香が背中を向ける。
あろうことか、そのまま伊藤君に向かって歩き出した。
瑠香が伊藤君に耳打ちすると、彼は嬉しそうに微笑んで私にぺこりと頭を下げた。
横では瑠香がペロッと舌を出して笑っていた。
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