三章

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「行って来ます」 「気を付けて行くのよ。着いたら一応電話してね」 一泊の旅行だけれど、あれこれ詰め込んだらバック一杯になった。 お父さんは仕事で居なかったのがありがたい。 どんな顔をすれば良いのかわからない。 お母さんも、にやにや笑うけれど何も言わないで送り出してくれた。 香澄だけが、昨夜も部屋に来て伊藤くんの写真を見せろと煩かった。 仕方なく、二人で撮ったプリクラを見せると「遥ちゃん、逃したらダメだよ」と、真顔で告げた。 もしかして、お兄さんになるのなら伊藤くんが良いと考えてもいなかった事を言う。 不安な気持ちと、それでも小走りになりそうな足元を抑えて駅へと向かった。 顔が緩んでいるのは、やっぱり旅行を楽しみにしているからだ。
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