田舎道

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 ……近くで、火が燃えて火花が弾けている音が聞こえる。  目を覚ます。ゆっくりと。  まず、僕は横になっているようだ。  右手を額に乗せている。服はずぶ濡れ。  頭が痛い。どうやら川原に寝そべっている模様。  太陽の光が眩しい。  川の香りが瑞々しい。  見ると、音の原因らしき焚き火と、それに手を翳す彼女の姿が目に入った。  そういえばまだ名前も聞いてなかったな、と思い出す。  さらによく見ると、近くにはその友達らしき一団がその焚き火から何かを取り出し食べていた。  ……芋だ。  いや、そりゃ今は春だけど、焚き火でって……  彼女がこちらに気づき。  近づいてくる。太陽をさえぎる形で覗き込み、 「お兄ちゃん、大丈夫? 大丈夫よね。結構他の子も落ちたけど、みんな平気だもんね。えへへ」  ……あぁ。  僕が落ちた後、他の子も挑戦したようだ。  みんな、服がびしょびしょだ。  そして今の確認は、大丈夫じゃないとお母さんに怒られるから、自分に言い聞かせているようだった。  そうわかると、僕は大声で笑ってしまった。  一心不乱で焼き芋を食べていた子供たちもこちらに振り向く。  だって仕方ない。  本当にここの子達は純粋なのだ。  打算など、ないのだ。  今までクールぶってた自分が馬鹿みたいだ。  ここに来てよかった。  じゃあ代わりに―― 「君ら、パソコンって知ってる?」  その後、彼女とは時を経て付き合うことになるのだが、それはまた別のお話。
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