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僕がこの街に来たのは、中学二年生の春休み。
父方の母親――つまり僕にとっては祖母にあたる人がこのたび天寿を全うした、ということで、葬式を挙げるために帰省する事になったのだ。
それでも、僕にとっては実感がわかない出来事だった。
僕はこの歳になるまで一度も父方のお婆さんに会ったことがない。
年末年始とか、大型の連休とかに行くのはいつもお母さんの方の実家だ。
だから、知らない人が死んだ、と言われても僕に言える事はご愁傷様、と言ったところだ。
道のりは、少し、楽しかった。
がたごとと、父の車の中で揺られながら山道を登り、下り、今まで見たことがないような閑散とした村――とでも言っていいのだろうか?
そういう所に入る。
家々の間は2~30mは空いており、その間を埋めるように畑が気持ちよく広がっていた。
家自体はからぶき屋根や、木造ながらも建ってからん十年は建ってるだろうな~、というような、ちょっとしたタイムスリップ感を味わえた。
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