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夫の一志は政府発表におおむね懐疑的だった。圧倒的な数の宇宙船がいつまでも空中に停泊しているのを見上げながら、それでも私たちはまだ本当に信じられなかったのだ。
そんな二択を迫られ、一方を選ばなければ即それが自分たちの死につながるなどという事が、本当にあり得る、とは。
マスコミは完全に封じられていたけれど、ネットやSNS環境は野放しだった。なので、一志はパソコン前にかじりつくようにしながら、あちらこちらと接触して、家族のために情報収集をした。
翌日の朝から、自衛隊職員の家庭訪問が始まっていた。
彼らは一件一件、訪れて、私たちの意思確認をするとともに、この一週間のための食料の手配などもしていった。
会社も学校もどんな店も、もう翌日の朝はどこも開くコトがなかったからだ。
ただ、電気やガスや水道のライフラインの確保だけはされていたから、その部分も政府は手ぬかりなく進めていたのだろう。
一志が最初に出した結論は保留だった。
自衛隊のヒトは、まだ時間があるから今すぐ決める必要はないと、丁寧に説明してくれた。
驚いたコトに、この一週間の過ごし方を書いたパンフレットまで携えていた。
気持ちが決まったら、特設電話にコールするのでも、ネットで連絡してくるのでも良いと、それを示しながら、家の中で不思議そうな顔をしている子どもたちに細く笑った。
「あんな小さな子どもさんが2人もおいでなンだから。
お父さんもお母さんも、どうかじっくり考えて下さい。
政府はあなた方の結論を強制的に変更させることはいたしませんので」
……強制しないかわりに、空を覆う宇宙船からは守ってくれることもしないわけだ。
私は思わずそんな事を言いかけたが、不安そうな静の表情に、グッと口をつぐんだ。
きっとこの公団だけでも、私と同じ気持ちで絶叫したくなっている母親が無数にいるはずだ。
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