第1章

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 最終の意思決定は、宇宙船がやってきてから5日後に設定された。  私の公団ではたくさんのヒトがネットの意見の方を支持して、残っていたから、心細さは緩和された。  これを機に、これまであまり話をしたことがなかったご近所の人ともたくさん話して、なんとなく暖かな気持ちにさえなったほどだ。  私たちの街には大きな公園があるが、その公園を中心にして自衛隊のキャンプが張られた。  この時点でリングを嵌めることを決め、それを受け取った人は、順次この野営地に移って生活を始めている。  静の幼稚園のお友達だった家族も、何組かがこの野営地に移ったそうだ。  ……そういう選択もある、と、思う。 何を信じて、何を信じないか。  私たちに与えられた情報は、あまりにも少なくて、しかも、不安定だ。  私も一志も、私たちと違う選択を責めたり、怒ったりするような言葉を出したりはしなかった。  けれど、周りの風潮は、徐々にそんな風に変わっていた。 公団の空気も日を追うごとに緊迫と熱気に包まれた。  最終、5日の意思決定の日を越えた夜なんて。  古くから街で営業している近くのスーパーの社長さんが、「これからもずっとお世話になるお得意様方に」と書かれたチラシと一緒に、倉庫から出したビールやチューハイを公団の管理事務所にドンと差し入れしてくれて。  集会所で配布があって、思いがけないお祭り騒ぎになったくらい。  ……でも、どの目にも間違いない不安があった。 もちろん、政府発表を信じないという選択をした私にも一志にも、それはあった。その不安を忘れるために、その日は夜通しの大騒ぎに私たちも参加した。  公団に残っていた子どもたちは、訳が良く判らない様子だったけれど、夜更かしに大喜びで走り回っていた。
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