第1章

7/11
前へ
/16ページ
次へ
 いよいよ明日にはすべての真実が判るという6日目の朝。  自衛隊の人たちが、広報車でこんな事を言って回っていた。  もうリングを受け取っているのに野営地に来ていない人たちが居るのだそうだ。  そういう人たちは、最終明日のぎりぎりの時間まで待つので、気兼ねなく野営地に来るように、とのことだった。  でも、そういう野営地は、これまではただのキャンプ場のようなさまだったのに、急に白い塀が張り巡らされ、銃を持った自衛隊の職員さんが、1メートルごとに配置されているような姿に様変わりしていた。  ……あれは中に入った人を外に逃がさないためなのか、外の人間が、土壇場で中に逃げてこようとするのを止めるためなのか、どちらなのだろう?  それを考えるにつけても、複雑な気持ちになった。 ……本当にこの選択で良かったのか。  私たちはともかく、まだ小さい、静や、薫は?  その事を考え出すと、回答が判らなくなって、頭が変になりそうな気がした。たぶん、一志も同じ気持ちなのだろう。  時々意味もなく静や薫をギュッと抱きしめては、頭をこすりつけたりして、笑われたり、嫌がられたりしていた。  たとえこの選択のもたらす結果がなんであっても。 ……最後のときまで、家族4人一緒に。  そんな事を思っていた……その日の晩だ。 その選択すら揺るがされるような訪問者が、私たちの元を訪れた。  
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

75人が本棚に入れています
本棚に追加