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僕は彼女の背後に回って両腕を片手で縛る。
金属音の響いた後に、エリーゼの蛇剣は地面に落ちた。
今の彼女は、素手だった。
その蛇剣を取りに行こうともがくエリーゼの頬に小さく傷を入れ、僕は躊躇った後に動きを止めた。
「やっぱり本気では無理だよ。エリーゼは女の子だし…」
エリーゼの両腕を解放し、エリーゼの頬を伝う血を右手の親指で拭った。
「エリーゼ、ごめん。」
「痛くもないわよ、こんなの。」
「本来ならエリーゼは死んでたよ。君はエリーゼに勝ったんだ。さぁ、あと2人だよ。」
ロクサスは僕に両手を広げながらそういった。
敵は目の前と背後にいる。
僕は慎重に状況を判断し、脳内でどんな方法で攻撃をするのか、どんな方法で来るのかを考えた。
「立ってるだけじゃ楽しくねぇぜ!」
背後から強く拳を握りしめて構えたカイが物凄いスピードで走ってきた。
僕は冷静に空白になりそうな頭をなんとか維持させるように、カイのいる方向に振り向いた。
「ちょいといてぇぞ、俺のパンチ。」
腕のぶっとい筋肉から浮き出した血管。
それが間近で見える程距離が近くなった。
僕はとっさの判断でサバイバルナイフを持っていない逆の左手で腰にかけてある双手剣を取り出した。
「なっ…」
僕は双手剣を目を瞑ったまま胸元で構えたら、何かを切った感覚とともに生温い何かが僕の体に浴びてしまった。
目をゆっくりと開くと、腹部から胸部まで深く傷が入ったカイが大量に血を流しながら傷口を抑えてしゃがみこんでいた。
「カイ!!」
倒れていくカイを見て再び、僕は体に浴びた生温いものが何かわかったのだ。
カイの血だ。
僕は叫びをあげ、カイの出血を止血しようと近付いた。
「ほらほら、あと一人僕が生きてるよ。」
ロクサスは容赦なしに僕のいる方向へ走りながら向かってきた。
ザクザクとゆっくり切っていくような鋸の形に似せた剣刺を僕に向け、僕は咄嗟に双手剣を左手だけで持って対抗した。
「カイが!」
「戦闘になれば君はそんな事言ってられないよ。治療はエリーゼに任せて。医学は自信があるらしいから。それより目の前にいる僕と戦って。その後に謝罪なりなんなりしてもいいから。」
「…でも」
「片手で勝てるわけねぇだろ!ナイフを投げ捨てろ!」
「カイは私に任せて。」
背後から聞こえた二つの声に、僕は振り返ることなく相槌を打つ。
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