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エリーゼの声がだんだん遠くなっていく事から、きっとエリーゼがカイの肩を支えてどこかへ連れて行ったのだろう。
それに安心したところで、僕はロクサスに集中をする。
力の強いロクサスは片手で双手剣を持っている僕に両手で押し付けてきた。
流石に押し負けてしまった僕は、背後から聞えた助言通りにサバイバルナイフを投げ捨て、両手で双手剣を握った。
背後から掠れた声で僕に助言をしたのは、言葉遣いが少し荒い事から間違いなくカイだということがわかる。
僕は顔も見れないまま、目の前にいるロクサスに両手で対抗していた。
「はい、あなたは止血から。動かないで。」
「お前、自分の頬の傷からどうにかしろよ。」
「元鬼慟隊がこの程度で治療だなんて考えられないわよ。あなたの方が深く切ってるんだから、先に治療させて。」
「っち。」
「きた。」
「うわあああ!」
僕は、ロクサスと剣で押し合いをしていた。
急にロクサスが力を抜いたかと思えば、しゃがんで僕の足元に落ちているサバイバルナイフを拾ったのだ。
そしてその勢いで僕の左足を狙って切り込む。
僕は叫び声と同時にロクサスの剣刺をはじいて手から離させ、サバイバルナイフを双手剣で防いだ。
「やっぱり君、素晴らしい瞬発力をもってるね。そんなすぐに判断するだなんて、初心者にはありえないよ。」
「いや、何かわからないけど体が勝手に動くんだ。僕の意思ではないんだけど…」
「僕の負けだね。」
「え?どういう…」
ロクサスは、僕の顔を見上げて微笑みながらそういった。
こめかみから血が流れているのを見た僕は、理解出来なかった「負け」の意味がわかった。
双手剣でサバイバルナイフを防いだ時にわずかにこめかみに傷がついてしまったようだ。
「ご、ごめん!」
「これくらい平気さ。さぁ、部屋に戻ろうか。カイ、大丈夫かい?」
「なかなかいいダジャレだな。この程度の傷ならまだまだ平気だ。」
「私が高い包帯や消毒液を使ったからね。」
「ったく、ガキに負けるとか俺もまだまだだな。今度またやろうぜ、手加減なしでな。」
「エリーゼ、カイの治療ありがとう。あのあと、すぐに君がカイをベンチのところに連れていってくれなかったら彼は今頃僕達の戦いに巻き込まれてたよ。」
「当たり前よ。早く戻りましょう。だんだん暗くなってきたわ。」
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