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静かな部屋で。
幸せそうな顔を眺めていたら、静かに頬を何かが濡らした。
それを感じて、僕はなんて寂しいやつなんだと思った。
近くにいる人間を愛しいと思えない。
遠くで見つめて、その愚かしくも美しい姿にだけ
愛しいと感じる。
どうして僕は人間なんだ。
こんなことなら、道端の石ころでも、薄汚れてしまった野良猫でも
良かったじゃないか。
僕は人を愛しているのに、恋は出来ない。
なんて空っぽなんだって思う。
とても空っぽ。
僕には何もない。
土砂降りの中で霧の中で
誰にも見つからない、誰からも見えない、
そんな場所に走り出せたら。
でもそれも怖いんだろう。
どうして。
こんなことなら。
僕は人間であることをやめてもいいと
思ってしまうんだ。
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