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人形
僕は人形。
いつか人間になることを夢見ている枯れた人形。
星に願えど
生み出した人間に訴えど
僕は人間にはなれない。
僕を人間とし
人間たらしめていくものは
まぎれもない僕自身だと
月は語っていた。
夢を持ち
希望を持ち
自分を持ったその瞬間に
僕は人間になる。
でもまだ足りない。
僕は人間じゃない。
僕が人間になるのは
まだずっと先の事。
朽ち果てるその前に
僕は人間になれるだろうか。
空を飛ぶ鳥に焦がれ
夜空に輝く星に焦がれ
海を泳ぐクジラに焦がれた
人間になれるだろうか。
僕のプラスチックの眼は
そのすべてを写しはするけれど
きらめかせはしない。
嗚呼
僕を忘れた愛しき主よ。
もう貴方を主とすることはないだろう。
誰をも主とすることはないだろう。
だって僕は人間になるのだから。
人間に必要なのは愛だろう。
主従のそこに確実な愛はあるか。
人間を買い被っていると言われればそれまで。
僕はそれでも人間になりたい。
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