肩乗り猫

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肩乗り猫

 最近、飼い猫の甘え方が変わった。  元々構って欲しがりで、家にいる時はべったりすり寄り、座れば膝、転がれば腹、歩けば後ろからついて来る…そんなふうだったが、ここ数日はやたらと肩に乗りたがるのだ。  座っていればよじ登ってくるし、寝転がった時には、必ず肩の所で丸くなる。  正直なところ、かわいいが、めちゃくちゃ重たい。  仔猫サイズならいざ知らず、大人になって久しい奴だ。いくら猫の体重などたかがしれてるといっても、毎度毎回肩によじ登られたら疲労が溜まる。  あまり不機嫌にさせないよう、何とか降ろすのだが、それでも懲りずに上ってくる。肩の上にドスンと丸まる。  そんな暮らしを続けていたある夜、変な時間に目が覚めた。  枕元の携帯を取ろうとするが、肩の猫がつかえて手が伸ばせない。  おい。ちょっとどいてくれ。携帯くらい手に取らせろ。  そんなことを思った時、耳の横で猫の唸り声が聞こえた。  あからさくに威嚇している声。  なんだよ。ちょっと動くのもダメなのか…そうぼやきかけて気づいた。  携帯に伸ばせず固まっているのは右腕。  猫の声が響いているのは左耳。  そう。猫がいるのは左肩だ。じゃあ、今右肩にどすんと乗っかっているものは…?  ふしゃーっ!!  最上級の威嚇が上がる。それと同時に俺の右肩は嘘のように軽くなった。  …この夜以来、猫は俺の肩には上って来ない。そのおかげか、あるいは、知りたくもない別の理由があるのかは知らないけれど、あれだけ疲れて重たかった俺の肩は元に戻った。  やっぱ、何かいたんだろうか。猫にはそれが見えていて、だから、俺に寄せつけないよう、肩を守ろうとして暮れてたのか。  判らないけれど、最近はなんとなくお礼のつもりで、少しグレード高い餌を与えている。 肩乗り猫…完
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